焼肉物語
今から3年程前になると思う。その日は午前の埼玉県坂戸市のある方から依頼されたホテルでのトリオの演奏とすぐその後に下坂橋駅近くにある仏レストラン”すいぎょく”での仕事が時間差で2本入っていた。事件は1本目の仕事の最中に起きた。
無事に仕事を終えた後、ホテルのレストランで食事を主催者側が持って下さることとなったので、ギターのケンタカハシさんとベースの三浦トオルさんと3人でランチのステーキを食べる事になった。
その前に僕だけはすぐに下坂橋に移動しなければならないためにまずはホテルから坂戸駅まで乗るタクシーをフロントに頼んで、タクシーが着いたらレストランに呼びに来てもらうことを伝えた。3人カウンターに座った。
タイムリミットは約10分。白い太めのコックが現れた。まずは目の前の鉄板で野菜から始めた。こういった状況だと非常に時間の経過が遅く感じる。肉が出てきたのはロスタイムになってから。サイコロステーキがサッカー日本代表のパス回しのように前に転がしたと思いきや、すぐに後ろに下げてしまう。元イタリア代表のロベルト・バッジオのようにスパッとお皿のゴールの枠に早く乗せてほしいものだった。その時、フロントから1人の女性が小走りに駆け寄ってきて。「タクシー来ました。」
試合終了が告げられた。
ケンタカハシさんは「うわっむごい・・・」。
三浦さんはただただ苦笑い。僕は泣く泣くその場を後にした。そして坂戸駅のホームから三浦氏にメールした。
「ステーキどうだった?」
2人の返事は「美味しかったよ。長坂君のもしっかりいただいたから。」
その1時間後仏レストランでも到着した際には食後という結果が待っていようとは知るよしもなかった。